ネパール在住邦人による言いたい放題覆面座談会

ネパールの今を語る! 第3弾

〜憲法制定議会選挙後のネパールと新トレッキングルートの魅力〜
APR 2008
 

参加者
Sさん:カトマンズにて旅行代理店を経営
Hさん:日本企業から派遣されカトマンズと地方を駆け回る企業マン
Dさん:カトマンズにて日本食レストランを経営
Pさん:ポカラ在住ゲストハウス経営


スペシャルゲスト
Tさん:シャングリラツアーズおよびヒマラヤンジャーニーにてトレックリーダーとして活躍

 

選挙終了!
国民は変化を望んでいる!

司会者 皆さん、お忙しい中お集りいただき、ありがとうございます。さて、延期に延期を重ねた憲法制定議会選挙が4月10日についに行われたネパールですが、これからのネパール、どうなるんでしょうね。
H その選挙ですが、マオイスト勝っちゃいましたね。
S 予想外の大勝利!
D 正直、びっくりしました。
P 私もです。うそでしょう?って感じで。
H マオイスト専門のジャーナリストの方でさえ、予想外と言ってますからね。
誰もこんな結果になるとは思ってなかったですよ。
D でもどんな人たちがマオイストに投票したんでしょうね?労働者階級の人とか農民とか?
S 労働者階級の人や農民にとっては、マオイストというのは既存の他の政党とは違って自分たちの味方であるというのはあるでしょう。
D 確かに労働組合活動などでかなり労働者の待遇改善のサポートなどしていますものね。
H 今までは労働者や農民にとっては、誰が政権とろうが彼らの生活が変わることはなかったけれど、マオイストについて行けば待遇がよくなるんなら彼らにつきますよ。“明日から、すぐに幸せにしてあげる”ってのがマオイストですから。
P それでもカトマンズのような都会でマオイストが勝ったことは意外です。
S ネパリコングレス(NC)の政権も経験した、エマレ(UML)もやったことがある。で、次は一つマオイストがどこまでできるのか見てみようじゃないか。そういう変化を求める国民の総意が現れた結果なんでしょう。
H マオイストの支持者が増えたわけではなく、既存の政党のやり方はもうわかっているし、それでは何も変わらない。だから今までやったことのないマオイストに一つやらせてみるかというノリがそこにあるということはマオイスト党首のプラチャンダも十分わかっていて、自身もそういう発言をしていますね。
司会者 これからが大変ということですね。
S 責任政党になるっていうのは、今までのように周りから内閣の失敗を非難したり、内閣のやり方に反対を唱えることの何倍も大変ですよ、一応2年(あるいは2年6ヶ月)で新憲法を作らなければならないし、ここできちんとできることを国民に向けて提示できなければ、次の選挙では勝てないでしょう。
D 変化を期待されている分、それに応えられなければ次はないということですね。
P でもマオイストって共産主義でしょ?ビジネスマンや経済界の中にそれを不安に思う声もあるんじゃないですか?
H いや、先日プラチャンダはこの6、7年間の間にネパールの経済が低迷し、ネパールのビジネスマンが非常に苦境に置かれていたのは十分承知し、憂慮するべき問題であるとし、今度10年は積極的にビジネスをサポートすると宣言していますね。ま、リップサービスかもしれませんが。

バンダやデモは減るのでは
という期待大?選挙終了!

S ま、我々観光業に携わるものから見れば、秩序ある政治をしてくれて、治安が安定するのではれば、誰が政権をとってもらっても構わないですがね。
P 観光業にとっては治安が安定することが何よりのサポートですから。
S でもこれからバンダやチャッカジャム(交通スト)は減ると思いますよ。今までは先頭きって政権に対してマオイストがバンダをやっていましたが、今や自身がメインの反対される側の立場になってしまった。バンダというのは責任者に責任を問うための手段であるわけですから、責任をとる立場になっちゃうとできなくなるでしょ?
D バンダが減るのはいいことですが、でも、今のネパール、バンダだけでなく、いろんな問題山積みですからね。庶民にとっても企業にとってもガソリンやガスの高騰および慢性的な不足などどうするんでしょうね?今までは、ガソリン値上げ反対って庶民の味方でやっていたのに。
H ガソリンは値上げせざるをえないでしょう。原油自体が値上がっているのに外国から買うしかないネパールがガソリンの値段を上げないって頑張ってもどうしようもない。そういう国際情勢をわかっている人である程度以上の収入がある人たちや輸送業者などは仕方ないことだと言っていますよ。問題は、ただでさえも手が出ない人たちで、ここへは何らかの政治的配慮が必要でしょうね。
ところでそちらのお店ではガスなどはどうしてます?
D いくらかは余分に買ってはいますが、プロパンガスを買い溜めるといっても限度がありますし。
P でもこの最近の値上げは厳しいものがありますね。この8年くらいで倍以上の値上げで、かついつも供給不足で順番待ち。
D ビジネスでレストランするにはやりにくいですよ、この状況は。でも、ここで日本食レストランとかやっている日本人って儲けるためにやっているというよりは半ば趣味みたいなところがありますからね。というか、そう思わないとやってられない(笑)。他に何か自分でやりたいことあって、レストランはそのための手段という面があるというか、とにかくお金を儲けるためにやる、というならネパールは選んでないかも。
P それは私も同感ですが、でも、ちゃんと儲けられるネパールであるべきなんでしょうねえ。
司会者 選挙には勝ったが問題は山積みのネパール。これからがマオイストの苦難が始まると思われますが…。
S 軍隊をどうするかってのも大きな問題でしょうね。今は、今までの正規軍とマオイストの軍隊と2つあるわけですが、どうするんでしょうね。
H 一つを陸軍、一つを海軍にするってわけには、ま、いかないでしょうね(笑)。
S 王室の問題もあるでしょ?王様はまったく人の言うこと聞いてない感じだし。あと、YCLをマオイスト自身がコントロールできるのかという問題もある。問題は山積み。でも、しばらくはそう強行なこともしないと思いますね。2年のうちに憲法つくらなくちゃいけない。で、新憲法の元、総選挙を行わなければならないっていうのがあると思うから。

予想以上に平和に終わった選挙

P それにしても、もっともめるかなと実は思っていたのですが、思っていたよりも何事もなく選挙が終わってびっくりしています。
H 妨害活動のため4月10日当日に投票を行うことができなかったのが33カ所で、なんらかの問題でそれを含めた100カ所以上の投票場で選挙やり直しとなりましたが、全国20889の全投票所における割合で見るとごくわずかといっていいと思います。
P それに、ポカラなんかでは、選挙運動というよりは、どこか祭りのようなそんな雰囲気がただよっていましたね。
H うちの方の村でも演説の壇上で演説と演説の間は踊りがあったりしましたがね。演目によっては、同じパフォーマーが全政党掛け持ちしてたりして(笑)。
S 朝7時から投票開始っていっているにも関らず、朝の6時ごろからみないそいそとでかけていたりして。
P かつて、市長の選挙があった時なんて外出禁止令がひかれて投票する人以外はでかけてはいけないって状況がありましたが、今回はそういうシリアスさはポカラなんかでは、全然なかったですもの。なんか、楽しいイベントにでもでかけるような雰囲気がありましたよ。うちの近所の人々の様子はね。
S それにしても今回は前回の選挙と違って、選挙だっていうのに町中が非常にきれいだったことに驚きました。9年ほど前の選挙では、カトマンズの町中あちこちポスターだらけでね。それが、今回は1枚もポスターなしです。
H 選挙前48時間以降は選挙運動禁止だったこともあり、最後はとても静かだったですしね。
P だから全体的には想像していたような大きな問題はなく選挙が行われたといってもいいと思うのですが、一部のもめた選挙区の報道などは、日本から見ると全体がもめたように受け取られるかとちょっと心配でしたね。
S それにしても、今回の選挙における日本のマスコミの読みはみな見事にはずれでしたね。
H まあ、ネパールのマスコミですらはずしているんですから、それは仕方ないでしょう。実はマオイスト自身も予想外の多数なんじゃないでしょうか。
D でも日本では、かつてマオイストをテログループとして報道していた時期もあり、それなのに、今回は選挙で圧勝している。日本の人から見たら、テログループが選挙で勝ったというような誤解をする人もいるかもしれないし、テロリストが勝つなんてとんでもない国だと思われるんじゃないかと…。
H アメリカもマオイストをずっとテログループとして見ていますが、今回選挙支援で外国から多くの人が選挙監視団として派遣されていて、その一人であるカーター元大領が今回の選挙は成功だ、アメリカ政府はマオイストのテロリスト指定を解除すべきだと発言し、物議をかもしているようですがね。
司会者 まあ、いろいろ問題があるにしろ、選挙が行われたということで、一つ前進したといっていいと思います。政治の話もつきないのですが、このあたりで本日のスペシャルゲストを御招きし、話題を変えたいと思います。

 

ヒマラヤの絶景が望める
新トレッキングコース
レンジョパスの魅力

司会者 今日のスペシャルゲストはシャングリラツアーズ/ヒマラヤンジャーニーでトレックリーダーとして活躍なさっているTさんです。彼女の仕事は主に日本人のお客様を連れてトレッキングリーダーとしてネパールの山々を歩くことなんですが、プロのトレックリーダーとして、最近のおすすめコースをご紹介いただけますか?
T カラパタール、ゴーキョはなどは昔から人気があるのですが、今一番私がおすすめしたいのは、レンジョパスを通るナムチェ発のグランドサークルコースです。カラパタール(5545m)からチョラパス(5350m)を越えてゴーキョピーク(5300m)へ。そこから降りて再びレンジョパス(5350m)に登りナムチェへ戻ってくる。尾根を歩くのではなく、登っては降り、降りてはまた登るので約3週間弱かかります。
司会者 3週間弱というとかなり長めですね?
T ええ、これ、実はわけありでして…。新しいトレッキングルートとしてレンジョパスコースを会社にプレゼンしたところ、レンジョパスは知名度が低いのでそれでは人は集まらないと言われ、それで知名度のあるカラパタールやゴーキョをくっつけることになり、結果としてこのように長いコースになったんです。期間も長く、高度も高いので参加申し込みが集まるのかどうか少し不安でしたが、思った以上に人気があり、今年で4年目なんですが、私がトレックリーダーとして参加しただけでも5山行になります。
司会者 参加者はどのような方なのでしょう?
T ある程度の体力および経済力に加え長期休暇がとれることが条件になりますので、年齢的には50代後半から60代前半の方が多いですね。
司会者 このコースの見所は?
T レンジョパスからの絶景です。他の場所、例えばカラパタールからでもゴーキョからでもエベレストを含むクーンブ山群はよく見えます。でもこのレンジョパスからだと、クーンブ山群はもちろんのことロールワリング山群までも見られるのです。このあたりでこの両方を一度に見ることができるのはここレンジョパスだけ。お客様から「レンジョからの景色は最高。これが見られるならカラパタールもゴーキョもなくてもいいくらいだ」と言われた時には本当に嬉しかったですね。
司会者 しかし、かなりきつそうなコースですね?トレックリーダーとしてご苦労などもあったのでは?
T 確かにすごくきついコースではあります。後半はずっと5000m以上になりますし、スタッフも雪が降るといやがりますし。ただ、私としてははじめにカラパタールから入ってゴーキョというコースの方がその逆よりは、楽かなと思います。最初に一番高いところから入ると体がその高度を覚えてくれてその後が楽というのもありますし、逆からだとゴーキョからチョラパスのざれ場(小石が堆積した足をとられやすい場所)を降りなくてはならずそれはかなり厳しいですし。
ただ、雪が降ると大変です。腰まで雪ということもあり、ちょっと泣きが入りそうにもなりましたがそれでも、アイゼンとピッケルは使いませんし、使わなくても歩けるようにサポートするのが私の仕事と思っています。
司会者 この仕事をやっていてよかったと思う時は?
T 新しいトレッキングコースを発掘し、そのコースにお客様をお連れし、お客様に「ここすごくいい!!」と喜んでいただいた時ですね。「やったー!」と心の中で叫んでいます。自分の作ったコースはやはりかわいいものです。そのコースをお客様に喜んでもらえることが、一番嬉しいですね。

雨期のヒマラヤは
高山植物が乱舞競演

司会者 さて、これからネパールは雨期に入るのですが、雨期のトレッキングでおすすめコースなどありますか?
T 雨期は高山植物の季節。ヒマラヤは高山植物の宝庫、本当に様々な種類の花を見ることができます。ゴーキョの第5の湖まで行くとテントに居ながらにしてエベレストも見え、目前には高山植物が咲き乱れるという素晴らしい展望が広がります。ただ、この時期ルクラへのフライトは欠航も多いのでスケジュールは余裕を持って16〜18日は見ていてほしいのですが。
司会者 時期的にはいつ頃がよいのでしょうか?
T 高山植物の中でも特に人気が高いのは、ブル―ポピーとヒマラヤゆりなのですが、この両方がちょうど見れるのは7月中旬から8月頭にかけてでしょうか?高山植物、本当にかわいいし、高山植物好きにとっては、雨期のため修行僧の歩き(雨の中をカッパを着込みうつむきぎみに歩く姿が修行僧のようなため)でも、歩く価値はありますよ。
司会者 ゴーキョ以外でも高山植物がよく見れるコースはありますか?
T ランタンも花の谷と呼ばれていますが、高度が低くヒルがたくさん出るのが、個人的にはちょっといやですね。あと高山植物といえば、私はまだ行ったことがないのですが、マナンエリアもいいらしいですよ。雨期だとメインは高山植物でヒマラヤは見えればラッキーというのが普通なんですが、アンナプルナの北側にあるマナンエリアは雨も少なく、雨期でもヒマラヤを見るチャンスはあります。あと、ダウラギリの裏のフレンチパスあたりも高山植物が素晴らしいという話です。
司会者 では、最後にこれからヒマラヤトレッキングに来ようという方へのアドバスをお願いします。
T ネパールの山は日本の山とは環境が違うので自分のレベルをよく見てコースを選ぶことは大切です。高度障害に陥った方が亡くなる率は1000人に1人です。甘く見ると大きな事故に繋がります。油断する事無く具合が悪くなった時は、我慢は禁物、直ぐに高度を下げる事が肝要です。しかし、むやみに恐れることもありません。体質的に高度順応し難い人及び出来ない人以外、高度順応4原則<栄養補給・水分補給・深呼吸・ゆっくりリズム>を守っていただけたら、5000m前後のトレックは、それほど問題無く行く事が出来ます。ご自分のレベルにあったコースで、無理をせずにネパールの山を楽しんでいただければ何よりです。